経済活動をする企業において、取引先や一般市民からの苦情に対する対応(クレーム対応)は避けては通れない問題です。苦情に対して適切に対応すれば企業の信用も向上しますが、不適切な対応をすれば信用が低下します。最近では、不適切対応の結果としてネットで「炎上」することもありますので、苦情処理をおろそかにすることによるリスクは、以前に比べても大きくなっているといえます。
苦情対応で失敗する典型的な例として、苦情を申し出た相手を初めから「敵」とみなして反論してしまうパターンが挙げられます。しかし、実際には相手の言い分(クレーム)に理があることも多いわけですから、このような対応は得策ではありません。
苦情対応の基本として、まずは、丁寧に話を聞くことが大切です。丁寧に話を聞くだけで解決するケースも少なくありません。
ただ、丁寧に話を聞いてもどうしても解決しないケースもあります。その場合はどのように対応していくかについて、社内で十分な情報共有が必要になってきます。私がこれまでに体験したまずい対応のケースでは、対応する人ごとに言うことが微妙に違って、そのことがさらに誤解を招く、ということが起きていました。このような場合は、対応する窓口を決めるなどの方策を検討する必要があります。
丁寧に対応したにも関わらず、残念ながら解決しないケースもあります。この段階まで至ってしまうと、社内全体で「相手が悪い」「ひどいクレーマー」といった共通認識を持ってしまいがちです。もちろん、実際にモンスタークレーマーと言われるような、もっぱら相手に問題のあるケースも少なくありませんし、そのようなケースでは毅然とした対応も求められます。
ただ、同じ出来事でも、社内からの見え方と、外からの見え方とでは印象が違うこともあります。ひどい態様でクレームをつけられているケースでも、原因を見ていくと、初期の対応に誤りがあったようなケースもあります。このため、十分な検討を経ずに一方的に話を打ち切るなどしてしまうと、信頼低下のリスクが高まってしまいます。
こうした場合は、第三者的な専門家の意見も聞きながら、「どのように」「どこまで」対応するかを判断していくのが良いでしょう。
苦情対応体制を強化することで、企業にとっては、信頼性や顧客満足度の向上といったメリットが生じます。ネット上の口コミなどで(その適否はともかく)評判が目に見えるようになっている現代においては、これまで以上に、こうした点が企業の成長のために重要になってきます。
弁護士は専門家として多くのトラブルを見てきていますので、体制構築の際には弁護士にも意見を聞いて頂けると、きっとお役に立てると思います。