債務者が任意で債務を支払ってくれないことがあります。こうした場合に債権者が自力で強制的に金銭を回収することは法律上禁止されています(「自力救済の禁止」)。このような場合は、裁判等を経て、強制執行をすることになります。
強制執行の要件
債権があるからと言って、すぐに強制執行ができるわけではありません。まずは、「実際に債権があり、それを相手に請求できる」という事について公的にお墨付きを得なければなりません。その代表的な手段は、裁判を行い、「判決」をもらうことです。判決には、金銭請求の場合、「〇〇円を支払え」というような文言が記載されます。これを、「債務名義」と言います。
上では裁判を例に出しましたが、「債務名義」は以下の手続で取得することができます。(代表的なもののみ記載)
- 裁判(判決、和解調書)
- 支払督促
- 執行証書
- 調停(調停調書)
- 外国の裁判所の判決(日本で執行判決を取る必要あり)
強制執行の方法
強制執行でお金を回収するためには、相手方の持つ財産をある程度特定する必要があります。財産を全く特定できない場合は強制執行をする事ができませんので、訴訟提起の前からこの点を意識しておく必要があります。
(1) 不動産、自動車等(不動産執行)
対象財産を差押えて売却し、売却代金を債権回収にあてる
【確認するもの】不動産登記簿、自動車登録事項証明書等
【注意事項】財産の価格に応じて、数10万〜200万円ほどの予納金が必要
(2)給料、預貯金等(債権執行)
給料、預貯金、売掛金等を差し押さえて、支払い義務者(雇い主、銀行等)から支払いを受け、債権回収にあてる
【確認するもの】勤務先、口座を所有している銀行支店名、取引先等
(3)不動産以外の物(動産執行)
不動産や自動車以外の財産を差押えて売却し、売却代金を債権回収にあてる
【確認するもの】換価価値のある動産の存在及びその所在地
強制執行の流れ
執行の申立(相手の住所地を管轄する裁判所)
↓
差押え命令
↓
差押え
↓
取立て(債権執行)
売却手続(不動産、動産) → 配当
以上は、強制執行に関するごく基本的な説明です。対象財産の種類や債権の金額、担保の存在、金銭債権以外の場合等で申立方法等も変わってきますので、具体的なご相談がある場合は、弁護士にお問い合わせください。