アメリカの相続手続「プロベート」とは?

アメリカに不動産や銀行口座などの遺産(プロベート資産)が残された場合、原則として現地の裁判所の監督下で行われる「プロベート(Probate)」という相続手続を経る必要があります。

この手続は、日本の相続手続とは大きく異なり、専門的な知識と多大な労力、そして特有のリスクを伴います。

1. 複雑なコミュニケーション:二者との膨大な英語でのやり取り

日本の相続人がアメリカのプロベート手続を進める場合、主に以下の二者と緊密に連絡を取り合う必要があります。

  1. 現地の弁護士:プロベート手続の申立代理を依頼する、現地の法律専門家。
  2. 財産管理者:裁判所によって選任され、遺産の管理・分配を行う責任者。日本の「相続財産清算人」に近い役割を担います。

これら関係者とのやり取りは、日本語で対応できる代理人を見つけない限りは、すべて英語で行われます。手続が複雑な場合や、日本の民法、戸籍制度、複雑な相続関係の説明が求められる場合などは、数百通に及ぶ英語のメールや書簡のやり取りが発生することも珍しくありません。

2. 相続制度の違い:日本民法の英文報告書が必要なケースも

アメリカ(各州)と日本では、相続に関する法制度(準拠法、相続人の範囲、相続分、戸籍制度など)が異なります。

そのため、プロベート手続の過程で、アメリカの裁判所や現地の弁護士から、「日本の民法ではこの場合どう解釈されるのか?」といった点について、弁護士による英文での報告書や意見書の提出を求められることがあります。

これには、日本の法律に関する正確な知識と、それを法的に適切な英語で説明する能力の両方が必要とされます。

3. プロベート手続に潜むリスク:相続できない可能性

プロベート手続では、債権者や他の相続人に名乗り出る機会を与えるため、手続の開始が公告されます。

この公告により、当初は把握していなかった事態が発生することがあります。

  • 未知の相続人の出現: 被相続人(亡くなった方)の「最近親者(Next of kin)」として、申立人が全く知らなかった「子」などが名乗り出てくるケース。
  • 新たな遺言書の発見: 申立人が把握していた遺言書よりも新しい日付の、あるいは内容が不利な遺言書が提出されるケース。

これらの結果、相続権の順位や相続分が変わり、多大な時間と費用、労力をかけてプロベート手続を進めたにもかかわらず、最終的に申立人が遺産を相続できないというリスクも存在します。

まとめ:米国プロベートは専門家へのご相談を

当事務所では、米国の相続案件(プロベート)に関する経験に基づき、現地の弁護士と緊密に連携を取りながら、煩雑な英語でのコミュニケーションや法制度の違いから生じる課題をクリアし、ご依頼者をサポートします。

大学院での留学生向け講義(日本法)

当事務所の澄川弁護士が、今年度、横浜国立大学大学院の客員教授に就任し、海外からの留学生を対象とした日本法に関する講義を担当しております。

講義はすべて英語で行われます。多様な法的背景を持つ留学生に日本の法制度の特色や実務上の運用を英語で的確に伝えるためには、時間をかけた入念な準備が不可欠です。大学での講義自体が慣れないこともあり、毎回大変ではありますが、同時に大きなやりがいもあります。

講義は1学期のみという短い期間ではありますが、各国から集まった熱意あふれる留学生との対話は、こちらにとっても刺激的な経験です。彼らの積極的な質問に対し、英語力を総動員して回答するのですが、日本語で行うようなスムーズな説明とまではいかず、もどかしい思いをすることもあります。

この機会を通じて、彼らが将来、それぞれの分野で活躍する上で参考となるような、実務的な知識や法的な思考方法を少しでも伝えられればと思います。

(公社)神奈川県宅地建物取引業協会川崎南支部の研修会

神奈川県宅地建物取引業協会川崎南支部にお声がけをいただき、令和7年3月21日に、以下のテーマで研修講師をさせていただきました。

宅建業者のための「所有者不明」「相続人不存在」不動産の基礎知識

令和5年から、所有者不明土地管理制度・所有者不明建物管理制度という新しい制度が始まっています。同じ制度でも、弁護士と宅建業者の皆様とでは市民からのニーズが異なるため、着目点や、重点を置いて理解すべき点が異なります。このため、私がこれまでの事件処理で宅建業者の方々と協働した経験も交えながら、宅建業者の方が特に理解しておくと良いと思われる点について話をさせていただきました。

私が過去に対応した件も、所有者不明不動産の隣接地所有者から宅建業者に相談があり、そこから弁護士につながったケースが多く、不動産業者と弁護士の連携を強めていくことは双方にとって極めて有用です。

今後も、より充実したサービスを市民の皆様に提供できるように、機会があれば業界同士での知識の共有していきたいと考えております。

交流会開催のお知らせ:中小起業における外国人材活用

NPO法人アジア起業家村推進機構(アジアビジネス共創ネットワーク)は、新体制のもと、中小企業の外国人材活用をサポートする活動を開始しました。

つきましては、外国人材の活用に関心をお持ちの皆様(法人・個人問わず)を対象とした交流会を下記の通り開催いたします。

当日は、省庁・自治体及び様々な企業に対し12言語対応AIサービスを提供されている株式会社ObotAI様にご協力いただき、多言語サービスに関する20~30分程度のプレゼンテーションを予定しております。

インバウンド人口の急増や外国人材活用が進む現代においては、多言語対応は国際ビジネスのみならず、国内ビジネスにおいても重要な要素となっています。多言語AIサービスに触れられる貴重な機会になるかと思います。

開催概要

日時

3月10日(月) 18時30分~

内容

  1. 株式会社ObotAI様による12言語対応AIサービスのプレゼンテーション
  2. 懇親会(参加費3,000円、飲み放題付き)

会場

澄川法律事務所

参加申込

以下の申込用フォームからお願いいたします。

https://forms.gle/T89phuzaHoXdbjK59

自転車運転(ながら運転、酒気帯び運転)に対する厳罰化|2024年11月 道路交通法改正

道路交通法が改正され、2024年11月に施行され、自転車の「ながら運転」や酒気帯び運転に対する罰則が強化されました。

これまでは罰金刑のみであった(あるいはそもそも犯罪として扱われなかった)行為です。法律が改正されたことにより、これらの行為が懲役刑の対象となる可能性があります。懲役刑を受けると、特定の職業に就くことができなくなる(辞任しなければならない)可能性があります。

お酒を少し飲んだ後に自転車で帰宅したことがある人もいるかもしれません。今後は、お酒を少しでも飲んだ日には一切自転車に乗らないよう注意する必要があります(自動車の場合と同様です)。

スマートフォンを操作しながら自転車を運転したり、画面を見ながら自転車を運転したりすること

以前の罰則(2024年11月以前

5万円以下の罰金

改正後の罰則(2024年11月以降

6月以下の懲役または10万円以下の罰金

交通事故やその他の交通の危険を生じさせた場合:
1年以下の懲役または30万円以下の罰金

酒気帯び運転

2024年11月までは、酩酊状態での酒酔い運転のみが処罰の対象でした。改正道路交通法では酒気帯び運転(血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で運転する行為)も処罰の対象となりました。車両提供者、同乗者、酒類提供者にも重い罰則が定められました。

酒気帯び運転の罰則:

3年以下の懲役または50万円以下の罰金

車両提供
罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金

同乗者、酒類提供者
罰則:2年以下の懲役または30万円以下の罰金

たとえ運転者が酔っているという認識がなくても、検査で数値が出れば摘発されます。