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自転車運転者のヘルメット着用義務

2023年4月1日から改正道路交通法が施行され、自転車の運転者等の遵守事項が変わりました。

(自転車の運転者等の遵守事項)
第六十三条の十一 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
2 自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

3 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

このように、乗車用ヘルメットについて定められました(児童・幼児については改正前から規定がありました)。「努めなければならない」とされているように、あくまで努力義務であり、違反したとしても罰則はありません。

もっとも、罰則がないからといって、この規定に何の意味もないわけではありません。法律上の義務として定められた以上、ヘルメットをかぶらなかったことが不利益に判断されることはあり得ます。具体的には、ヘルメットを着用せずに事故に遭ったときに、損害賠償額が減額される可能性があります。

例えば、自動車が自転車に衝突して自転車運転者が大怪我をしたようなケースで、自動車側は支払額を減らすために「自転車側がヘルメットを着用していなかったことに過失がある」と主張してくる可能性が高まります。裁判でも、過失割合の判断の際に影響が出てくるでしょう。

どの程度の影響が生じるかは今後の事例の集積を見る必要がありますが、おそらく、当初は5%から10%程度の過失が認定されるのではないかと予想します。

自転車乗車時の事故、特にヘルメット未着用での事故では、重篤な後遺障害が生じることもあります。そのような場合、怪我で収入が減少した分の生活費は損害賠償で賄っていくことになります。本来得られた損害賠償額から5%や10%でも減額されると、その後の自身や家族の人生にも大きな影響が生じかねません。

こうしたことも念頭に、是非、早期に自転車用ヘルメットを準備して着用していただければと思います。そして、自転車用ヘルメット利用者が増えて、大きな怪我をする人が減少すれば、何よりです。

投稿者:

弁護士 澄川 圭

神奈川県弁護士会(旧横浜弁護士会)川崎支部所属。企業法務、倒産事件、一般民事事件及び家事事件。英語関連の業務(英文契約書等)も取り扱っております。