判例時報2472号に、神戸地裁令和2年2月20日判決が掲載されています。
鉄道の高架下に店舗等を設けている例というのは珍しくありません。こうした土地の賃貸借契約について借地法が適用されるかどうかについて判断がされた事例です。
一般論としては、高架下の土地については様々な特殊性から、通常の借地法・借地借家法の適用がされない可能性が高いと考えられ、借地法の適用を否定した複数の裁判例もあります。上記判決も、鉄道高架下土地の賃貸借契約について一般の土地の賃貸借契約とは異なった特殊な契約であるとして借地法の適用が否定されています。なお、同判決については控訴された後に和解が成立しているようです(残念ながらその内容までは分かりません)。
もっとも、上記判決においても、高架下だから借地法の適用がない、という単純な判断をしたわけではなく、以下のような様々な事情が検討された上で借地法の適用が否定されています。
- 高架柱のため、利用できる空間が極めて限定的である
- 鉄道事業に支障が生じないよう種々の制約が加えられている
- 賃料が低廉である
他の事案においても、高架下であるから必ず借地法(借地借家法)が適用されないというわけではなく、様々な事情を検討する必要はあります。
なお、高架下の(土地ではなく)建物に関する判例としては最高裁平成4年2月6日判決があります。この判例は、高架下施設について借家法の適用を認めたものですが、これは飽くまで鉄道会社から使用承認された貸主と、その貸主から物件を借りた借主との間の裁判です。そもそも鉄道会社からの明渡し請求などではなく、上記に挙げたような高架下の事案とは性質が異なるものといえます。
高架下土地の賃貸借契約についてトラブルがある場合は、一概に結論を出せるものではありませんので、契約書等を用意した上で弁護士に相談して頂ければと思います。