司法試験の合格者数と新人弁護士の採用活動

少し前に今年の司法試験の合格発表があり、合格者数は1583人でした。ここ数年、司法試験の合格者数は減少が続いていますが、1500人台という数字は予想を超えた少なさであり、それなりにインパクトのある数字でした。

弁護士は、司法研修所を修了した年によって「修習期」で分類されます。上記の1,500人強の皆さんはこのまま司法修習生になれば「70期」ということになります。

10年前の60期以降、各期の人数が2,000人を超えるようになりました。その数年前までは各期数百名しかいませんでしたから、まさに激増と言えます。この結果、「仕事がなくて食えない弁護士」が話題に上るようになり(不思議なことに私はそんな人に会ったことはないのですが)、弁護士業界の中では「合格者を速やかに減らすべきだ」という意見が強くなりました。

確かに、合格者数が減れば競争の激化も抑えられますので、傾きかけた業界の安定にはある程度資するのかもしれません。しかし、物事はそう単純ではありません。弁護士の大多数が所属する東京・大阪(及びその他大都市)とその他の地域とでは、違った見方をする必要もあります。

私は、神奈川県の川崎市というところで弁護士をしています。川崎市は都市部ではありますが、東京という巨大都市と横浜という大都市に挟まれており、裁判所においても弁護士会においても「支部」という扱いになります。

私が弁護士登録をしたころは、川崎市には弁護士が数十名しかいませんでした。人口比でいえば、弁護士過疎地ともいえるような状況だったのです。どうしてこういうことが起きるかというと、どうしても大都市希望の司法修習生・弁護士が多いということが挙げられます。つまり、求職者(司法試験合格者)が少ないと、このエリアでは東京や横浜でほとんどの人が就職してしまうので、周辺部には弁護士が増えないのです。(私自身も、川崎市出身でなければ川崎市内で就職することはなかったかもしれません)

今後、司法試験の合格者が減少してくると、改めて同じことが起きてきます。弁護士の人口はこの10年で劇的に増えましたので、採用母数も増えており、新人弁護士を対象とした求人総数も増えていると考えられます。このような状況の中で急激に合格者数が減ると、まずは東京の求人から埋まっていき、次いで横浜の求人が埋まり、そこでほぼ全員が就職できてしまう可能性があります(もちろん司法修習生全員がそういう思考をするわけではありませんが、一般的な流れとしてこのようになると考えます)。周辺(支部)の小規模な(弁護士数名程度の)事務所では「新人を採用したくても採用できない」という状況が目立ってくると考えられます。このようなエリアで今後の事務所経営を考える場合は、求人難になるであろうことを十分に理解して、それでも一定数の弁護士を雇いたいのであれば、司法修習生が自分の事務所に応募してくれるための方策を考えておく必要があります。

求人難に対する方策はいくつか考えられます。

一番分かりやすいのは、給与・報酬等の条件を上げることです。もっとも、他事務所と比較して条件を上げられるような小規模事務所は、それほど多くないでしょう。あるいは人材紹介会社を利用することも考えられますが、高額な手数料(年収の3割程度)を払った挙げ句に、すぐに退職されてしまうようなおそれもあります。

結局は、小手先のことではなく、「在籍したいと思える魅力のある事務所」を作っていくほかはないのでしょう。その上で、司法修習生にその魅力を分かってもらわなくてはいけません(ここがとても難しい)。

もっとも、何を魅力と捉えるかは事務所によっても司法修習生によっても異なりますので、それぞれがうまく個性を活かして特徴のある事務所を作って行ければ良いのでしょう。いずれにしても事務所の魅力の最大の要素は「人」だと思いますので、突き詰めて考えれば、良い採用(活動)が次の良い採用(活動)を生み出すのかもしれません。

弁護士 澄川 圭

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弁護士 澄川 圭

弁護士 澄川 圭

神奈川県弁護士会(旧横浜弁護士会)川崎支部所属。企業法務、倒産事件、一般民事事件及び家事事件のほか、英語関連の業務(英文契約書等)も取り扱っております。