成年後見人の横領

とうがらし成年後見人に選任された弁護士が数千万円ものお金を横領したとして、逮捕されました。
https://www.asahi.com/articles/ASH7P45XQH7PUTIL02X.html

被害額が1億円に達する可能性もあるとのことで、おそらく業務上横領罪で4~5年程度の懲役(実刑)になるのではないでしょうか。

被害者はもちろん大迷惑ですが、こういう報道があると真面目に仕事をしている他の弁護士もあらぬ疑いをかけられることになり、大変な迷惑を被ることになります。

新聞記事の最後のコメントにもあるように、成年後見人による横領は、「悪意を持っていれば誰でもできてしまう」ところがあります(専門家ではなく親族が後見をしているケースでは、あまり報道されませんが、非常に多くの横領事例があります)。かといって、成年後見業務では、成年後見人が財産管理の広い権限を持っていることで様々な手続がスムーズに進むという側面が強く、成年後見人の権限を制限するのもなかなか難しいのです。

通常であれば、成年後見人は年に一度、家庭裁判所に財産状況を報告し、預金通帳のコピー等も提出することになっています。最近では家庭裁判所でもこの報告書を丁寧にチェックするようになっており、この年一回の報告さえ適切に行われていれば、横領などはなかなかできるものではありません。ところが、数年前に弁護士が逮捕された別の事件では、家庭裁判所への報告が何年にもわたって行われていませんでした。今回のケースでどうったかは分かりませんが、横領した弁護士がまともに報告していたとは思えません。

当事務所でも多数の成年後見事件を扱っていますが、どの事件でも、家庭裁判所に報告する月を決めて、年に一度の報告を確実に行うようにしています。通帳のコピーをつけて定期的に裁判所に報告しなくてはいけないのが分かっているわけですから、仮に悪意があっても横領をすることなど考えられません(もちろん、不正をするつもりなど初めからありません)。

成年後見人の権限の広さからして、成年後見人による横領を防ぐ万全の方法は存在しないと思われます。それでも、家庭裁判所が年一回の報告を厳格に求めること、そして、家庭裁判所から報告を求めた後に合理的な期間を過ぎても報告を怠るような成年後見人には新件を任せないのはもちろんのこと、既存の事件についてもすべて解任する、などの対応を取っていけば、弁護士を初めとする専門職後見人による不正については、ほとんどを未然に防げるのではないかと考えます。

なお、東京では、弁護士が成年後見人をしている場合にも成年後見監督人をつける運用を始めるようです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150723-00000008-mai-soci
この方法であれば、ほとんどの不正を防げるでしょう。しかし、成年後見監督人の報酬も、被後見人本人の財産から支出されることになります。ごくごく一部の不祥事で、後見制度自体の利用コストが上がってしまうのは、とても残念なことです(その意味では、保険のような仕組みを利用した方が全体のコストは下げられるように思います)。

いずれにしても、ほとんどの成年後見人は、本人のために真面目に財産を管理しています(平成25年末時点での後見制度利用者は全体で17万6000人程度とのことです)。被後見人やその家族が、真面目な成年後見人に安心して財産を預けられるようにするためにも、問題のある成年後見人を積極的に排除していく工夫をしていかなくてはいけません。

投稿者:

弁護士 澄川 圭

弁護士 澄川 圭

神奈川県弁護士会(旧横浜弁護士会)川崎支部所属。一般民事事件及び家事事件のほか、英語関連の業務(英文契約書等)を多く取り扱っております。