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緊急事態宣言や営業自粛要請を受けて、事業継続に悩まれている経営者の方も少なくないと思います。資金繰りが厳しくなった場合(債務返済が困難になった場合)は、なるべく早期に弁護士に相談していただきたいと考えています。早く相談して頂くほど取りうる手段が増え、事業再生の可能性や、関係者(従業員や債権者)にかかる迷惑も少なくなります。弊事務所でも飲食店等の事業再生をサポートした経験がありますが、その中にはご相談があと1か月遅れていたら対応できなかった、というケースもあります。
相談する際の私なりの視点をごくごく簡単に書くと、以下のようなものです(実際には個別の事情でかなり内容が変わってくることがあります)。
事業継続に関するご相談を受ける場合、まずは、様々な事情を詳しく伺います。
平常時は問題なく経営できていたのか(①)、それとも、平常時から既に経営(資金繰り)が苦しかったのか。その場合、単に借入返済の負担が重かったのか(②)、それとも、元々事業として十分な利益が出ていないのか(③)。借入はどの程度しているか。資産はどの程度あるか。従業員はどういう状況か。経営者の家庭環境、健康状態はどうか。こうした状況を受けて、経営者としてどのようにしたいか。
こうしたことを詳しく伺いながら、経営者と話し合っていきます。
①の場合は、金融機関から緊急融資を受けることで乗り切れる可能性もあるでしょう。このため、まずは金融機関に相談していただくのが先決です。税金・社会保険料については、猶予制度があります。また、場合によっては事業所の賃料減額等の交渉をすることも考えられます。
(参考)
経済産業省「新型コロナウイルス感染症関連」情報
国税庁 新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ
厚生労働省 社会保険料の猶予等について
逆に、③の場合は、廃業(破産等)を早期に検討していただく方が、その後の経営者の人生にとってはメリットがあることも多いでしょう。
②の場合は、借入の状況や将来(平常に戻ったとき)の見通しなどを考えながら、適切な方法を検討していくことになります。状況を整理した上で金融機関との融資交渉をしていく方法も考えられますし、債務整理や民事再生などの方法で事業を再生させていくことも考えられます。もっとも、③に近い場合などは廃業することをお勧めするかもしれません。
弁護士にすぐ相談すべきかどうか、ごく簡単な判断基準
抽象的なことを書いても、分かりづらいかもしれません。この緊急時に、弁護士にすぐに相談すべきかどうかのごく簡単な判断基準を示せ、と言われれば、以下のようになると思います。
金融機関(公庫・銀行・信用金庫等)の緊急融資を問題なく受けられるかどうか
緊急融資を受けられない場合は、残念ながら、この社会情勢では廃業という選択肢も検討することになります。廃業(破産)については、なるべく早期に処理した方が、経営者自身の将来はもちろんのこと、関係者(債権者・従業員等)にかかる迷惑も小さくなることも多いのです。このため、なるべく早期に弁護士に相談していただくことをお勧めします。
また、融資が困難な事情がある場合も、弁護士が状況を整理して事業の将来性について説得的に説明することで、金融機関と交渉できることもあります。
経営危機の際に避けていただきたいこと
これまで相当数の倒産処理事件を担当してきた弁護士として、経営危機の際にとにかく避けていただきたいことがあります。
・高利の融資を受けること
・家族、親戚や知人からお金を借りること
・今後収入の見込がないのに手持のお金で弁済してしまうこと(生活ができなくなります)
こうした行為に移る前に、弁護士に相談して下さい。
(関連記事)資金繰りが厳しくても、変な金融を頼るべきではありません
特に緊急で弁護士に相談して頂きたいケース
賃金の未払がある場合
事業者(労災保険適用事業所)が倒産した場合に、未払賃金立替払の制度を利用すると、従業員が賃金の一部について立替払を受けられます。
ただし、裁判所への破産手続開始申立てをした日から6か月以上前に退職(解雇)した従業員については、この制度は利用できません。
つまり、解雇してから6か月以内に破産申立をしないと、従業員は受け取れるはずだった賃金を受け取れなくなってしまいます。事業者の破産申立は、準備だけで数か月かかるのが通常です。このため、賃金未払がある場合は、とにかく早期に弁護士に相談して下さい。
(参考)労働者健康安全機構のウェブサイト
https://www.johas.go.jp/chinginengo/miharai/tabid/687/Default.aspx