「事業が苦しいからお金を貸して欲しい」と頼まれたら

弁護士として、多数の企業の破産事件を見てきました。中小企業や個人事業者の破産事件では、経営者が知り合いから数百万円の借入をしているケースが相当数あります。ただ、そのお金はほんの1、2か月事業を延命させるために消費されてしまうことが多く、有効に使われることはほとんどありません。

お金を借りることで事業継続の見通しが立つのであれば、金融機関(銀行、信用金庫等)が融資をします。つまり、知人に借金を頼んでいる時点で、金融のプロから見てその事業の先行きが相当に厳しいということです。

もっとも、通常は、友人・知人に「お金を貸して」と頼むのは、相当に心理的ハードルが高い行為です。親しい友人から人としてそこまで頼られたときに、無碍に断るのも難しいかもしれません。

そういうときは、是非、「弁護士を交えて話そう」または「まずは弁護士に相談してみて」と提案してください。そして、それが嫌だと言われたら、お金を貸すべきではありません。

弁護士は、多くの破産事件を見ています。最後の最後に知り合いからも借りつくしてしまい、友人との信頼関係を失って、後の復活まで困難にしてしまっている経営者(破産者)も少なくありません。

そういうことが起きないように、事業が苦しい知人から相談された方は、「弁護士を交えて話そう」または「まずは弁護士に相談して」とアドバイスして頂ければ、と思います。

弁護士は、法律のプロであると同時に、混乱状況を整理するプロでもあります。弁護士と話をするだけ方向性が見えてくることも少なくありません。

※ 弁護士には守秘義務がありますので、同行者と一緒にお話を伺う場合は、必ず「同席で話すことで構わないか」という確認を取ります。

新型コロナウイルス緊急事態宣言を受け、事業継続について悩まれている事業者の方へ

神奈川県・東京都の事業者の方の事業継続・破産に関する相談フォームを設けました。ご相談はこちらからご連絡下さい。
事業継続・事業再生・倒産・破産の相談申込はこちら

近隣の行政書士の方と共同で、経営に関するお悩みや地域の支援活動等について気楽に雑談や情報交換できる場も設けております。ご興味のある方は、ご連絡下さい。

 緊急事態宣言や営業自粛要請を受けて、事業継続に悩まれている経営者の方も少なくないと思います。資金繰りが厳しくなった場合(債務返済が困難になった場合)は、なるべく早期に弁護士に相談していただきたいと考えています。早く相談して頂くほど取りうる手段が増え、事業再生の可能性や、関係者(従業員や債権者)にかかる迷惑も少なくなります。弊事務所でも飲食店等の事業再生をサポートした経験がありますが、その中にはご相談があと1か月遅れていたら対応できなかった、というケースもあります。

 相談する際の私なりの視点をごくごく簡単に書くと、以下のようなものです(実際には個別の事情でかなり内容が変わってくることがあります)。

 事業継続に関するご相談を受ける場合、まずは、様々な事情を詳しく伺います。
 平常時は問題なく経営できていたのか(①)、それとも、平常時から既に経営(資金繰り)が苦しかったのか。その場合、単に借入返済の負担が重かったのか(②)、それとも、元々事業として十分な利益が出ていないのか(③)。借入はどの程度しているか。資産はどの程度あるか。従業員はどういう状況か。経営者の家庭環境、健康状態はどうか。こうした状況を受けて、経営者としてどのようにしたいか。
 こうしたことを詳しく伺いながら、経営者と話し合っていきます。

 ①の場合は、金融機関から緊急融資を受けることで乗り切れる可能性もあるでしょう。このため、まずは金融機関に相談していただくのが先決です。税金・社会保険料については、猶予制度があります。また、場合によっては事業所の賃料減額等の交渉をすることも考えられます。
参考)
 経済産業省「新型コロナウイルス感染症関連」情報
 国税庁 新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ

 厚生労働省 社会保険料の猶予等について

 逆に、③の場合は、廃業(破産等)を早期に検討していただく方が、その後の経営者の人生にとってはメリットがあることも多いでしょう。

 ②の場合は、借入の状況や将来(平常に戻ったとき)の見通しなどを考えながら、適切な方法を検討していくことになります。状況を整理した上で金融機関との融資交渉をしていく方法も考えられますし、債務整理や民事再生などの方法で事業を再生させていくことも考えられます。もっとも、③に近い場合などは廃業することをお勧めするかもしれません。

弁護士にすぐ相談すべきかどうか、ごく簡単な判断基準

抽象的なことを書いても、分かりづらいかもしれません。この緊急時に、弁護士にすぐに相談すべきかどうかのごく簡単な判断基準を示せ、と言われれば、以下のようになると思います。

金融機関(公庫・銀行・信用金庫等)の緊急融資を問題なく受けられるかどうか

緊急融資を受けられない場合は、残念ながら、この社会情勢では廃業という選択肢も検討することになります。廃業(破産)については、なるべく早期に処理した方が、経営者自身の将来はもちろんのこと、関係者(債権者・従業員等)にかかる迷惑も小さくなることも多いのです。このため、なるべく早期に弁護士に相談していただくことをお勧めします。

また、融資が困難な事情がある場合も、弁護士が状況を整理して事業の将来性について説得的に説明することで、金融機関と交渉できることもあります。

経営危機の際に避けていただきたいこと

これまで相当数の倒産処理事件を担当してきた弁護士として、経営危機の際にとにかく避けていただきたいことがあります。

・高利の融資を受けること
・家族、親戚や知人からお金を借りること
・今後収入の見込がないのに手持のお金で弁済してしまうこと
(生活ができなくなります)

こうした行為に移る前に、弁護士に相談して下さい。
(関連記事)資金繰りが厳しくても、変な金融を頼るべきではありません

特に緊急で弁護士に相談して頂きたいケース

賃金の未払がある場合
 事業者(労災保険適用事業所)が倒産した場合に、未払賃金立替払の制度を利用すると、従業員が賃金の一部について立替払を受けられます。
 ただし、裁判所への破産手続開始申立てをした日から6か月以上前に退職(解雇)した従業員については、この制度は利用できません。
 つまり、解雇してから6か月以内に破産申立をしないと、従業員は受け取れるはずだった賃金を受け取れなくなってしまいます。事業者の破産申立は、準備だけで数か月かかるのが通常です。このため、賃金未払がある場合は、とにかく早期に弁護士に相談して下さい。

(参考)労働者健康安全機構のウェブサイト
https://www.johas.go.jp/chinginengo/miharai/tabid/687/Default.aspx

新型コロナウイルス関連 Web法律相談(中小企業、個人事業者対象)

新型コロナウイルスによる外出自粛等により深刻な影響を受けている事業者の方も少なくないと思います。そこで、新型コロナウイルス関連の法律相談を下記の要領で実施します。

ウェブ会議での法律相談(Zoom、Skype、ChatworkまたはTeamsを利用)
相談時間:30分
相談料:5500円(税込) 振込またはクレジットカードで支払

ご希望される方は、お問合せフォームから、希望日時を複数お送り下さい。原則として平日の午前10時から午後5時の間とさせていただきます。

なお、経済的に困難な状況になっている事業者の方については無料とします。
その場合のご相談はこちらのフォームからお願いします。

政府の支援策等については、各省庁のウェブサイトもご覧下さい。

省庁サイトへのリンク

経済産業省
「新型コロナウイルス感染症関連」情報
https://www.meti.go.jp/covid-19/

中小企業庁「新型コロナウイルスに関連した感染症対策情報」
https://www.chusho.meti.go.jp/corona/index.html

厚生労働省Q&A(企業向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_q
a_00007.html#Q4-5

SDGs(持続可能な開発目標)について

 SDGs(エスディージーズ)とは、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された国際社会全体の目標としての「持続可能な開発目標」です。日本でも、地方自治体や企業において積極的に取り入れられてきており、例えば神奈川県は「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されています。下記の形のカラフルなピンバッジを付けている方を見かけることも増えています。

 SDGsには17の目標がありますが、「1 貧困をなくそう」「4 質の高い教育をみんなに」「5 ジェンダー平等を実現しよう」「8 働きがいも経済成長も」「10 人や国の不平等をなくそう」「16 平和と公正をすべての人に」など、弁護士の活動ともかなり重なるものです。

 SDGsは、様々な組織が連携するための指標となり得るものであり、単独組織ではなし得ない連携活動を構想・設計していくにあたってとても有益なツールと感じています。弁護士や法律事務所の間ではまだまだSDGsの認知度が低い状況ですが、今後は当事務所でもSDGsを踏まえて地域での様々な連携を加速していけないか、色々と検討していきたいと考えています。

KAWASAKI事業承継市場セミナー

平成30年11月19日、川崎市産業振興会館で開催された事業承継のセミナーに参加しました。

特例事業承継税制については、平成35年3月までに特例承継計画を提出しなくてはなりません。今から4年半というと余裕がありそうに思いますが、後継者の発掘・育成まで考えると、かなり厳しい時間制限ともいえます。

事業承継について考え始めなくてはいけない経営者の方々は、是非、定期的に相談できる専門家を作っていただければと思います。普段から依頼している税理士さんがいらっしゃれば、まずはそちらに相談してみると良いでしょう。

当事務所でも、定期的に中小企業経営者の方々が各種専門家と飲食しながら気楽に話せる場を設定できればと計画中です。参加にご興味があれば、お知らせください。