弁護士による契約書の作成・チェック

当事務所では、神奈川県内・川崎市内の企業の皆様から、契約書の作成・チェックのご依頼を頂いております(日本国内の契約も英文契約も対応できます)。

弁護士が契約書のチェックや作成のご依頼を受ける際には、なるべく、最初に1時間程度の打合せをさせて頂き、契約の対象となる商品・サービスの内容、想定される取引の流れ、そして契約にいたった背景といった具体的な事情について伺うようにしております。

これは、契約書の文面のみからでは取引のイメージが掴めず、適切なチェックができないためです。

また、打合せの際に、その他の法的問題等についてもお話し頂いて、アドバイスができることもあります。

このため、新たな契約(取引)を検討されている際は是非、雑談程度のお気持ちでも結構ですので、検討されている契約(取引)の枠組み等について、最初に弁護士と話す時間を取って頂ければと思います。

財産開示手続と刑罰

財産開示手続で裁判所に出頭しなかった債務者が書類送検されました

財産開示手続を申し立てられたのに正当な理由なく出頭しなかった債務者について、神奈川県警が書類送検(検察庁に送致)したとの報道がありました。

財産開示手続とは

財産開示手続は、債権者が債務者の財産について情報を得るための手続です。財産開示手続の申立があると、裁判所が、財産状況について説明させるために債務者を呼び出します。

財産開示手続を申し立てるためには、強制執行をできる債務名義(確定判決等)があることに加え、事前の強制執行がうまくいかなかったことなどの要件があります。

債権者は、お金の支払いを請求する裁判で勝訴しても、債務者の財産の所在が分からなければ強制執行もできず、債権を回収できません。実際に、裁判で勝ってもお金を回収できないケースというのは珍しくありません。

こうした問題を解決するために、平成15年の民事執行法改正で、債務者を裁判所に呼び出して財産状況について説明させる財産開示手続が新設されました。しかし、当初の制度では、債務者が呼び出しを無視しても最大で30万円の「過料」が科されるのみでした。このため債務者が出頭しないことも多く、あまり実効性のない制度と言われていました。

そこで、さらに民事執行法が改正され、2020年4月1日から施行されました。この改正では、不出頭の罰則が、上記の過料から、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」へと大幅に強化されました。

これまでとの違い(過料から懲役・罰金へ)・・・前科、刑務所

過料とは異なり、懲役や罰金は刑罰であり、前科がつきます。刑務所に入れられる可能性もあります。

改正前に科されていた「過料」は一種の罰ではありますが、刑罰ではありません。このため、前科もつきません。そして、実際に過料が強制的に徴収されることも少ないため、「30万円以下の過料」といっても、実効性があまりありませんでした。

これに対し、懲役と罰金は、刑罰です。いずれも前科がつきます。特に、懲役に関しては、刑務所に入れられるわけですから、過料とは次元の異なる重い罰といえます。罰金についても、支払わなければ労役場留置と言って刑務所に入れられる制度があります。

今回報道されたケースでは、債務者は、無視していれば債権者が諦めると思っていたようです。これまでの制度では、このように考えて請求を無視する債務者も珍しくありませんでした。しかし、今後は、債務者が不誠実な態度を続けると前科までつく可能性が高まりました。既に他の前科があるような債務者については、懲役刑の実刑(執行猶予がつかず刑務所に入れられること)が科される可能性もあります。

過去の未払い債務がある債務者の方

上記の改正により、今後、多くの債権者が財産開示手続を申し立てることが予測されます。過去の未払い債務があって、支払ができないという方は、早急に弁護士に相談してください。弁護士が事情を確認し、状況に応じて分割払いの交渉や自己破産の手続をしていくことになります。

債務者の中には、自己破産をすることで債権者に迷惑がかかるのでは、と躊躇する方もいらっしゃいます。しかし、払えるあてもないのに自己破産もせずに放置する方がよほど債権者に迷惑がかかってしまいます。

債権者に重ねての迷惑をかけてしまう前に、弁護士に相談して頂ければと思います。

過去に裁判で勝訴したのに回収できなかった債権者の方

過去に裁判で勝訴したにも関わらず、債務者の資産の在処が分からずに回収できなかった債権者の方にとっては、上記の改正は朗報といえます。

もちろん、この手続で必ず資産の所在が分かるわけでもありませんし、そもそも資産がない債務者については債権は回収できません。しかし、支払能力があるのに無視を続けるような不誠実な債務者に対しては、相当有効な手続ができたと言えます。当法律事務所としても、回収可能性があるケースについては積極的に財産開示手続を活用していければと考えております。

遺留分侵害額請求権(遺留分減殺請求権)の消滅時効

 「遺産分割 時効」というキーワードでGoogle検索すると、上位に出てくる解説サイトの情報がかなりの割合で間違っています。

 中には、【遺産相続の時効は、相続の開始(被相続人の死亡を知ったタイミング)から〇年間です。相続の開始を知らなかった場合には、遺産相続の時効は相続の開始から〇年となっています。】という内容の記事を掲載しているサイトさえありました。これは、遺留分侵害額(遺留分減殺)請求の時効と混同して誤った記載と思われます。相続そのものに消滅時効はありません。

 そこまで大胆な間違いでなくても、遺留分侵害額(遺留分減殺)請求権の消滅時効について、「死亡を知ったとき」または「遺留分が侵害されていることを知ったとき」から1年で消滅時効になり、被相続人が死亡してから1年経つと時効になってしまうと断言しているサイトも少なくありません。

 実際には、遺留分の請求権が消滅時効にかかるのは、その双方を知った時から1年です。つまり、死亡の事実は知っていても、遺留分の侵害の事実(遺言の存在など)を知らなければ、1年の消滅時効は進行しません。

民法1048条(旧1042条)
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 一見簡単に見えることでも、重要な問題については、ネット検索で済ませずに、専門家に相談していただければと思います。

分散した株式の集約(中小企業)

中小企業(同族会社)における株式の分散

 中小企業(同族会社)では、親族に株式を分散した結果として、株主の人数がかなり多数になっていることがあります。会社によっては、その中の何人かの株主と連絡が取れなくなっていることさえあります。

 このような状態を放置すると、次のような問題が生じかねません。

  • 株主総会が適法に開催できず、重要な意思決定ができなくなる
  • 友好的でない人物が株主になる可能性がある

 かつて、同族会社では株主総会などを開催していないことも多く、それで表面上は問題なく経営できていたかもしれません。しかし、現在ではそのようなことは許されなくなってきており、上記のようなリスクが顕在化することも少なくありません。

 しかも、放置することで、多くの株主についてさらに相続が発生し、株主数がさらに増えてしまうことがあります。相続により、会ったこともない人物が株主になってしまうこともあります。

分散した株式を集約する方法

 分散した株式を集約するには、いくつかの方法があります。

  • 交渉して株式を買い取る方法
  • 90%以上の総議決権を有する大株主による株式売渡請求
  • 5年以上住所不明の株主の株式について競売
  • 相続人等に対する売渡請求(定款の定めが必要)
  • 全部取得条項付の種類株式を発行する(定款の定めが必要)

 これらの方法にはそれぞれ特徴がありますので、会社の実際の状況に応じた適切な方法を選択し、それに向けて準備をしていくことになります。

まずは、株主名簿の整備が必要です

 どのような方法を選択するか検討するにあたり、まずは株主名簿を正確に整備する必要があります。現在でも、株主の情報が決算書にしか記載されていないという中小企業も少なくありません。しかし、様々な事情から、決算書に誤った記載がされることも少なくありません。そして、株主を正確に把握できなければ、有効な株主総会を開催することさえ困難になりかねません。

 会社法では、株主名簿の整備義務が定められており、違反した場合の罰則もあります。いまだに株主名簿の整備をしていない会社については、早急に対応をする必要があります。

専門家(税理士・弁護士)によるサポート

 分散した株式の集約については、上記のように様々な方法があります。しかし、どの方法が正解と言い切れるものではなく、個々の会社の実情に沿った検討が必要になってきます。数年単位での準備が必要になることも少なくありませんので、継続的に専門家(顧問税理士、顧問弁護士)に相談できる体制作りをしていただければと思います。

コンプライアンスとは

 現在の企業法務では、「コンプライアンス」がとても重要です。最近では、大企業だけでなく中小企業でもコンプライアンス規定を作成するところが増えてきています。

 コンプライアンスというカタカナ語の意味するところは広く、明確な定義をすることはできません。日本語では「法令遵守」という言葉が使われることが多いようです。もっとも、コンプライアンスにおいて遵守すべき対象には法令(法律、行政機関の命令)のほかに、社内の規則や社会の一般的なルールも含まれ得ることから、「法令遵守」という言葉が使われることもあるようです。あるいは、「規範遵守」や「ルール遵守」とするのが分かりやすいかもしれません。

 社会の様々なルールには、国会で慎重な審議を経て成立する法律のような「硬いルール」から、日常の食事のマナーのような「緩いルール」まであります。企業が則るべきコンプライアンスに、全てのルールが含まれるわけではありません。そして、どの程度のルールまでが含まれるのか、という境界線は曖昧です。この境界線については、各企業でそれぞれ意識して検討し、「守るべきルール」を設定していく必要がありますし、検討の過程ではどうしてもグレーゾーンも出てくるでしょう。

 そして、「守るべきルール」の範囲は、企業文化によっても変わってきます。決して、全てのルールを守る会社が良い会社ということにはなりません。極端な話、従業員全員の箸の上げ下ろしまで上司が厳しくチェックするような会社があったとすれば、ブラック企業と言われかねないでしょう。

 結局のところ、コンプライアンスは、「当該企業が守るべきルール」を決めて経営・業務遂行をすべき、ということになります。そのためには、経営者や従業員が、自社の経営理念や業務内容について十分な理解をしながら、自社に合った形のコンプライアンスを構築していく必要があります。また、コンプライアンスは、時代によっても変わっていくことに注意が必要です。一度社内で決めたから終わり、というものではありません。例えば、過去には女性を採用で差別したり、女性職員のことを軽んじたりということが、さしたる問題意識もなく行われていました。しかし、現在ではいずれも大きな問題があると捉えられる行為です。

 そして、自社のコンプライアンスについて考えるにあたり、社会において「必ず守るべき」と捉えられているルールを蔑ろにしないように気をつける必要があります。組織内部だけで検討をすると、どうしても過去の企業文化になじんでいることもあり、社会全般のルール意識とは乖離してしまうことがあります(いまだに女性職員のことを「うちの女の子」と呼ぶ中小企業経営者は珍しくありません)。このため、社内のコンプライアンス規定等を作成する際には、是非、外部の専門家(弁護士等)の意見も聴いて頂ければと思います。